「技術職」 「技術屋」 というフレーズは社長が常日頃から口にするWordである。
情報を整理して分かりやすく伝える技術_。
テクニカルライティング、テクニカルイラスト、編集DTP、デザイン・・・
これらの技術を身につける上で最も重要と考えている事は何でしょうか?
と言う問いに社長は次のように答えられた。
「素直であることや」
この「素直」という言葉は私自身も入社以来よく耳にする言葉であり、後進を指導する
中で多用してきた。では何故「素直」でないと技術が身に着かないのか。
これは取りたてて「技術」と声高に叫ぶのではなく、「仕事人たるべくには」に変えて
みても良い。“作業”ではなく良い「仕事」が出来るようになるには_。
簡単な事である。 自分が選んだ会社に未経験で入社したのだから、1から10まで
素直に耳を傾けて聞き、実践せよ。さすれば道は開けると言う事である。
これが中々上手く消化しきれないでいると「作業者」から「仕事人」との間にある壁が
打ち破れない。
会社勤めする目的の多くは労働の対価として賃金を得る事であり、雇用の目的は
社業を通じて社会貢献し、企業の業績を伸ばし、従業員の生活を維持向上させる
ことだと考える。 待遇改善と言う面では貢献度と言う評価が付いて回り、個々の
昇給や労働条件等を決定する材料となる。
そのためにも素直な心で耳を傾けて聞き、実践する事は技術習得の近道である。
と、齢四十四を過ぎた今、身に染みて「素直」であれと己にも言い聞かせている。
OJTにより経験値が少し上がる入社二年〜三年目、この時期が一つの分岐点と
考えている。 私たちの業種において二〜三年の経験値と言うのは高くない数値
であり、実践の他にも自己学習による知識の習得が必要な時期であるからだ。
例えば業務上のミスを起こしてしまった場合、素直な心は「はい。申し訳ありません」
が一番初めに出てくるべき言葉であり「いや違うんです」「客先のシステム設定が」
「一生懸命頑張ったのですが」は決して口にしてはならない。自己弁護や仲間を
擁護する言葉は技術習得や底上げの妨げとなり、向上心や改善と言うことに意識が
向かなくなると考える。
以前、師匠の一人に「いや」「たら」「れば」は三悪言だと教えられた_。
認知的不協和
認知的不協和(にんちてきふきょうわ、英: cognitive dissonance)は、人が自身の
中で矛盾する認知を同時に抱えた状態、またそのときに覚える不快感を表す社会
心理学用語としてアメリカの心理学者レオン・フェスティンガーによって提唱された。
認知的不協和が存在するとその不協和を軽減し除去する心理的圧力が生じ、その
結果どちらかと言えば自分にとって不都合な一方が無意識のうちに修正されるのだと。
・ミスをした
・頑張っている
この不協和を軽減するために、
・ミスをした
・頑張っている+システムの設定がおかしかった、知らなかった
これにより自分の中の不調和を軽減しようとする。
よく似た童話でイソップの「キツネとブドウ」のお話が有る。
とても美味しそうなブドウが成った木を見つけたキツネは、一生懸命取ろうとジャンプ
したがなかなか取れなかった。 最後に「どうせ、あのブドウは酸っぱいんだ」と思い、
その場を立ち去った。 正に自分の中の不協和を除去した瞬間である。
失敗した言い訳や、出来ない理由を並べ立てるよりも、素直な心でミスを認めて受け
入れ、どうすれば出来るのかを考える。これにより階段を一つ登り、視野を広げる事が
出来るのではないだろうか。ミスを認める前にあれこれ言い訳や自己弁護を展開する
者には、差し伸べる手はいずれ無くなり、夜道の行灯は永久不変に照らしてはくれない。
認知的不協和を軽減することで保っていられる部分が有ることは理解するが、それを
意識するとしないとでは大きな違いがあるのではないか。
認知的不協和と前向きな思考は似て異なるものと考える。
松下電器(現パナソニック)の創業者である松下幸之助は自信の著:「素直な心になる為に」
を次のように締めくくっている。
お互いが素直な心になれば、一切全てが排除される事無く認められ生かされ、物事は
常に和やかな姿のうちにスムーズにすすめられて好ましい成果がもたらされ、よりよき
共同生活、一人ひとりみなの幸せな心になりましょう。素直な心はお互いを強く正しく
聡明にいたします。そしてよき社会を作り自他ともの幸せを産み高めてゆくのです。
本書は私自身がいつまでも素直な心を養い高めていくためにずっと手元に置いておき、
迷った時に読み返したい一冊である。
2009年10月31日
企画営業部 川内カツシ