川西おもろ能 第二十回記念を観て:川内カツシ

秋から一気に冬へと季節の移り変わりを感じるほどの冷え込みを見せた先週末、第二十回を迎える兵庫県川西市のイベント「川西おもろ能」を観劇して来ました。

川西市は大江山の鬼退治(酒呑童子)で有名な源頼光生誕の地であります。
日本古来の伝統芸能を重んじ、後世へ伝えるべく開催される「川西おもろ能」は町をあげての一大イベントとして1992年の第一回開催以来、今年で二十回目を迎えます。今回は記念冊子の刊行や演目の充実などでイベントを盛り上げていました。

能は誰しも一度は観た事がある伝統芸能だと思いますが印象としては「よく分からない」「台詞が聞き取れない」というのが共通しているのではないでしょうか。私も昨年までは同じ感覚で観ていましたが、今回の観劇で幾分理解が深まったように思います。それは私自身が記念冊子の製作にかかわり、実行委員の方と膝を突き合わして打ち合わせしたり、能について勉強を重ねる機会を頂いたからだと思っています。

以下、能について、記念誌から引用します_。

今、時代を超え、国の違いを超え、もっとも古く、もっとも新しい演劇というべきである。
日本芸能の種目名で通常、猿楽能を指す。猿楽能は、南北朝時代から室町時代初期にかけて発達し、江戸時代中期にほぼ様式の完成を見た。屋根のある専用舞台をもち、面を用い、脚本、音楽、演技に独自の様式を備え、猿楽狂言 ( 狂言) と併演する芸能である。

上古に大陸から輸入された散楽は、平安時代に笑いの芸能に中心が移り、発音も(さるがく)と変り、文字も猿楽、申楽と書かれるようになった。その発達を遂げたものが狂言である。一方、寺院の春の法会における呪師作法に関連して、修法の意義を演技・演舞によって示す役目を、猿楽者に任せるようになった。これを呪師猿楽といい、老翁の姿の神が訪れて祝福を与えるという芸能は、各地に古くから存在したが、その老翁を猿楽者が勤める習慣が出来た。これが翁猿楽で、父尉・翁・三番叟の三老翁が順演する様式が定着した。鎌倉時代後半には、各地の寺社に縁を求めて猿楽座が作られるようになった。

南北朝時代には、諸国の猿楽座の中で大和猿楽と近江猿楽が際立つ存在だった。大和猿楽の中心は興福寺支配の四座、円満井座の金春流、坂戸座の金剛流、外山座の宝生流、結崎座の観世流であった。
結崎座を率いる観世(観阿弥)という役者は、技能抜群の上、工夫に富み、将軍足利義満の愛顧を得て、座勢を大いに伸ばした。観阿弥の功績は、物真似本位だった大和猿楽に、近江猿楽や田楽の歌舞的に優れた面を取り入れたこと、幽玄の芸風に向かわせたこと、リズムを主とした曲舞の曲節を導入したことなどである。その子世阿弥は、能をいっそう高度な舞台芸術に育てた。夢幻能という様式を完全な形に練り上げたことと、能の道の理論を約二〇種の著述に残したことは不滅の功績である。近江猿楽は名手犬王の後継者に恵まれず、室町中期から急速に衰えた。

一方大和猿楽は観世座を先頭に他の三座も力を伸ばし、観世元雅、金春禅竹、観世信光らがそれぞれの持ち味の作能を行い、他の地方の猿楽を圧倒した。桃山時代の豊臣秀吉は大の能好きで、猿楽者の保護に気を配り、自らも舞台に立った。
江戸時代になると、大和猿楽の四座は江戸幕府の直接支配下に入り、その典礼の能を勤めることが第一任務となった。この頃金剛流より喜多七大夫が喜多流の創立を許され、併せて(四座一流)と称された。座の制度の他、シテ方、ワキ方などの専門別の役籍が定められ、各役籍に数個の流派が確立、流派には家元があって芸を統制した。急な用命に応ずる必要から、常備演目が定められ、他の演目は廃絶され、新作の上演はなくなった。その代りに芸の細部に磨きがかけられ、技法はきわめて高度となった。
能とはなにか。それは緊張の美学。精神と肉体の極限の仕事である。

平成十三年五月、ユネスコの 「無形世界遺産」 第一号の一つに宣言され「人類共通の宝」と認められた。

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「秘スレバ花ナリ、秘セズバ花ナルベカラズ」
このフレーズが響きました〜

日本古来850年に渡り不変を継承してきた伝統芸能「能」_。
その奥深さは あらゆる芸能の基本となっているのでしょう。。。故に、若い世代の新しい芸能文化に興味を持つ人たちにも観て欲しいと思っています。

今回は事前に下調べをして行ったせいか前回よりも数段能を理解できました。
ただ、演じる側にも観劇者により理解を深めてもらうための努力が必要なのでは?という疑問もあります。もっともっとエンターテイメント性を持たせるとか、プログラムにはシーンやセリフの 解説などをもっと分かりやすく記載すると若い人も見易いのではないでしょうか。

私自身もこれからもっと劇場に足を運び見識を広めたいと思います。更に興味があるのは文楽なのですが、これはもう少し人生経験を積んでからにしておきます^^

第二十回 川西おもろ能 演目

  1. 翁  神楽式 シテ 金春欣三
  2. 能  羽衣 シテ 金春欣三、ワキ 福王和幸
  3. 狂言 蟹山伏 シテ 茂山あきら
  4. 半能 土蜘蛛 シテ 櫻間右陣、ワキ 福王知登、ワキツレ 広谷和夫、ワキツレ 福王和幸

 

2011年10月4日
企画営業部 川内カツシ

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