先週末は、大阪の教養を身につけるため?に2つの場所に出かけました。
土曜、大阪大学豊中キャンパスの総合学術博物館待兼山修学館へ。
文化財に指定されている観光映画を見るためにです。
昭和12年に大阪市電気局と産業部によって制作された『大大阪観光』というものです。
30分と短い映像ですが、70年前の映像はかなり貴重です。
橋爪節也著『大大阪イメージ―増殖するマンモス/モダン都市の幻像』(創元社2007年)では、
「戦前における最も完成した形での“モダン都市・大阪”を、即時的なニュース映像に近い感覚も
交えて、またとないタイミングに撮影したもの」と紹介されています。
昭和12年、盧溝橋事件やスペイン内戦でゲルニカ空爆が起こった年です。
大阪市の時代背景はというと、東京市の人口を抜いて、大大阪と呼ばれていた時代です。
市域拡大と関東大震災からの移住者も加わり日本最大、世界6位の都市となった大阪市ではあり
ますが、この頃から政府が戦時統制をしき、文化・芸術・教育・産業あらゆる分野の中枢を東京に
集めていったことで、大阪の相対的地位が低下していこうとしていた年でもあります。
映像はリアリティがあり大阪が一番輝いていた時代が鮮明に映し出されていました。
関一市長が計画した御堂筋の開通や市営地下鉄が開業して数年経ち、産業都市として観光都市
として華やかに紹介されている内容でした。
急速に発達する交通機関や中之島界隈の近代建築物群、娯楽の殿堂として人気を博した道頓堀や
千日前、定番観光地となっていた通天閣や天王寺公園や住吉大社等、順をおって紹介されています。
しかし、その影に潜む都市問題も鮮明に伝わってきました。
環境問題、人口問題、住宅問題、交通問題・・・。今に通じる都市問題が70年前にも深刻化している
ことを知れたのは私にとって大変新鮮でした。
この数年後、大阪の大空襲で多くが焼け野原になってしまうわけですが、現存する建築物もいくつか
あります。そんな建築物を実際見にいって、この映像とリンクさせてみたいと思いました。
次の日の日曜、天保山のサントリーミュージアムへ。
建築家安藤忠雄のギャラリートークを聞くためににです。
安藤忠雄建築展と題して、水都大阪の都市再生プロジェクトと同じく水都イタリアのベニスの最新
プロジェクトを紹介するものでした。
安藤さんにお会いするのは今回が初めてでしたが、テレビや書籍でよく目にしていましたし、気さくな関西の
おっちゃんという感じで、世界的な建築家ですが、好感のもてる素敵な方でした。
また誰よりも元気でよくしゃべる!パワーを感じずにはいられませんでした。
大阪の再生では、特に2つのプロジェクトがメインとされていました。
- 造幣局の桜並木を延長させて、世界一に!
- 河川敷のビルの外壁を緑で覆って壁面を緑に!
そのプロセスとして、
- 市民からお金を集める市民参加型とする!
- シンボルとして、首相にも来てもらう!
大阪の街はヨーロッパの街のように統一性のとれた美しい街とは程遠いです。
建築物も都市計画もグチャグチャなのが正直なところです。
それでもできることを皆で実践していくんだという高い心意気を、誰でも分かるように話してくださる安藤さん。
今後の様々な活動に期待したいと思います。
その安藤さんが総合アドバイザーを務める「水都大阪2009」。
今年の8月から10月にかけて来訪者100万人を想定して、様々なイベントが計画されています。
大阪市のように都心に水の回廊があるのは世界的に珍しいようです。
川が埋め立てられたり、阪神高速に隠れてしまっている場所が多いのが現状ですが、水と緑の力で大阪を
より魅力的な街にしていってほしいものです。
堂島川沿いの暮らす私が思うに、川の流れは水の循環を感じることができて壮大な気持ちにさせてくれます。
それに心を穏やかにさせてくれますし、気持ちのリセットができると思います。そこに緑を増やすことで効果
アップも期待できるのではないでしょうか。
実際ここ数年で遊歩道等が整備させて、散歩やジョギングする人を目にする機会も増えました。
それでもまだまだ寂しい感はあります。人が集まるアイディアはまだまだ潜んでいると思います。
冒頭で大阪の教養を身につけるためにと書きましたが、大阪をよくするためにどうすればいいのか、
考えを巡らせることができた良い機会となりました。
一市民として街の為に何か貢献できる事を探します!
2009年7月6日
地図制作部 宮本英幸